Asador Etxebarri(アサドール・エチェバリ)
スペイン北部、ビスカヤ県の小さな村アチャンド(Atxondo)。
自然と伝統が色濃く残るこの土地に、世界中の美食家たちが一目を置くレストランがある。
アサドール・エチェバリだ。


一歩足を踏み入れれば、そこは薪火の魔術師と称されるシェフ、Bittor Arguinzonizの聖域。
すべての料理が、薪火だけで調理されるという特異なスタイルを貫いている。


薪の種類を変え、火加減を繊細に調整しながら素材の持つ香り・水分・甘み・食感を最大限に引き出していた。
提供されるのは、山の恵み・海の恵みすべてを地元バスクの自然から厳選した素材のみ。
火と素材の対話に徹したコースは、料理というよりも一つの哲学だ。




ミシュラン1つ星でありながら、「世界のベストレストラン50」では常にトップ10入りするなど、世界的な評価は極めて高い。


テラスでいただく冷静スープから始まる。
「またエチェバリに帰ってきた」と、嬉しい気持ちにさせてくれる時間。
そしてここに記事を書くのも2回目。


最初に頼む白ワインは辛口の白。
フランスはロワール地方のLes Belouines 2021。
フルーティーな香りとしっかりとしたミネラル感が感じられてさわやかなはじまり。


シンプルで力強い、前菜の一皿たち。
カリカリに焼かれたパンの上に、新鮮なアンチョビとトマトのコンフィを重ねたバスク風トースト。
薄くスライスされた自家製チョリソと共に、薪火料理の幕が開く。


塩をふられたヤギのミルクのバターが絶品。
このバターはシンプルでありながらも、パンと一緒にいただいたときに舌の上で薪火の香りとともに広がる余韻に驚く。




美味しすぎて飲めそうな水牛のモッツェレラ。


目の前に置かれた大きな赤エビは、薪火の香りを纏って力強く登場する。
殻を割ると、甘く濃厚な味が口いっぱいに広がる。


ウニの殻を器にしたクリーミーなウニのソース。
濃厚な磯の香りと滑らかな口当たり。


やはり今回も登場したタラ。
カリカリのチーズとの相性が抜群だった。


涙豆とともに供されたタコの一皿は、シンプルながらもスモーキーなソースとの対比が鮮やかだった。


黒トリュフを贅沢にのせたキノコのスープは静かに香り、やさしく、それでいて記憶に残る。


ほろほろと崩れる白身魚にバターソースをあしらった一皿。素朴な見た目とは裏腹に、繊細で美しい火入れが施されている。




エチェバリといえばやはりこの皿。
絶対的主役の薪火で焼かれた骨付きのアンガス牛。薪火の炎を纏って登場する。
噛むごとに広がる旨みと薪の余韻に、思わず目を閉じてしまう。


お肉に合わせた赤ワインはナチュラルなキュヴェ・レアンドルをチョイス。
力強く、遊び心のある味わいは料理に見事に寄り添っていた。


牧歌的な余韻を感じる濃厚なミルクアイスとビーツのソースを合わせたカップデザートは、とにかく絶品。


そしてラストを飾ったのはフォークを入れるとトロッと流れるチーズケーキは、温かさとやわらかさを残しながら、この5時間半ほどの長いコースを美しく締めくくってくれた。


都会の喧騒を離れ、バスクの山あいで体験する究極の薪火の芸術。
アサドール・エチェバリは、美食という言葉の真意を深く問いかけてくれた。
Information
Asador Etxebarri
San Juan Plaza, 1, 48291 Axpe, Bizkaia, Spain
+34 946 583 042
URL:https://www.asadoretxebarri.com