森と山とデザインが溶け合う、空のような隠れ家

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Forestis Dolomites

イタリアの南チロルの山岳地帯、標高1,800 m。
かつて王家の療養所として建てられ、時を経て現代のラグジュアリー・ウェルネスホテルへと生まれ変わったForestis Dolomites。

建築家Armin Saderが手がけた三本のガラスタワーと歴史的なヴィラの融合は、まるで森の木々と岩肌と雲を同時に映し出す鏡のようだった。

デザインは山と森、素材と光、音と静寂、そのすべてが設計され尽くしている。

至るところにある大きなガラス窓、あるいは石の床や壁が、森と山の光と影をゆっくりと映し出す。

スプルースの木、ドロミテの石、ガラスの3つだけで構成されたミニマリズムな世界は、むしろ豊かに語りかけてくれた。

木は香りが穏やかで光を柔らかく受け止め、
石は雪山の静けさを宿すような質感で空間に深度を与え、
ガラスは景色を連続させているように思えた。

「余白」

素朴ではなく、粗さもない。
洗い立ての空気のような純度で心がゆっくりと整っていく。

空間と光と影がこれほどまでに美しいと感じたホテルは初めてかもしれない。

ここにいる感覚を第六感まで全てで感じたかった為、今回の滞在はタワースイートの部屋を選んだ。

大きな窓からは世界遺産のドロミテ峰が目の前に広がる。
窓から差し込む氷と光の層が、部屋をまるで映画のワイドスクリーンのように感じた。

朝は淡い光、夕暮れには山肌の影、
夜には深い藍の空がそのまま室内に入り込む、
そんな部屋でのForestisにおける朝の目覚めは、気持ちよかった。

ウェルネスの思想としてのForestisは森の力でその身体と心に静けさを呼び起こしてくれるような感覚だった。

スパには、プール、ハーブサウナ、フィンランド式サウナ、森の木や石を用いたスパトリートメントなど、自ずと呼吸が深くなるような施しが整う。

無音の深い森が言葉では言い表せないほど、整えてくれた。
自分の何かが再生する感覚。

心を落ち着け目を閉じ無音を感じる時間。

また朝はヨガやハイキングにも参加でき、
冬はスキーインやスキーアウトで雪山へのダイレクトアクセスが可能なのも嬉しい。

ヨガや瞑想のプログラムも充実し常に自分に向き合える。

スパもまた素晴らしかった。
石や木を使いソフトなタッチで身体の重みが取れる感覚に時間を忘れ、
匂いと温かさと、そして静かな呼吸の音。

季節と標高で表情を変える山の恩恵を、あらゆる身体体験として享受できる場所なのだろう。


Forestisの食卓は、森の恵みを皿の上に感性という形で描いていた。

ディナーは滞在日数に合わせて毎晩異なる構成で供された。

美食のためだけに再訪するゲストが多いのも、ここなら納得がいく。

森を食べるという感覚に近い料理。
土地の気配を感じる。

料理は、地元で採れた食材と清らかな湧き水で仕立てられていた。

ここで味わった森の食は、きっと都市のレストランでは再現できない。
風土の思想とも捉えられるここでの食体験は、記憶の奥深くに残っている。

朝食は、大きな窓から注ぐ朝の光が森の湿度を含みながら柔らかくテーブルを照らし、
まるで瞑想かのようだった。

地元の酪農家から届くフレッシュバター
蜂蜜、ハーブ、地元の森で採れたベリー
焼き立てのパンとグラノーラの香り
透明な味わいの山の湧き水
自家製ヨーグルト

身体がゆっくりと目覚め、この朝食の時間を永遠に感じたいとさえ思った。

レストランの大きな窓は、
朝・夕・夜と、ホテルの中で最も劇的に光が変化する場所。

朝は淡い金色の光が眩しく空気を澄ませる。
夕暮れはドロミテの稜線が紫から紺へ溶けていき、
夜は窓が黒い鏡となり、室内の灯りが静かに浮かび上がる。

誰もが声を落としてしまうほど光と影が美しく、
大袈裟な表現ではなく、まるで自然が演出する舞台をそのまま観客席で味わっているようだった。

滞在中、何度も窓を眺め、
建物の線や木材の香り、料理の余韻に意識が向くたびに、きっと本当に豊かなものは静かで深いのだろうということを再確認させられる。

自然、建築、食、そしてウェルネス。
これらが均衡を保ちながら、ひとつの芸術作品として成立している事がForestisの美学なのだろう。

自然と対話し、静けさの中で自分自身を取り戻す。

そんな経験は旅の贅沢さを再定義してくれ、
そこに宿る余白のなかで、自分自身のものがたりに何を書き足す余地があるのかを考えていた。

Information

Forestis Dolomites
Plancois 292 – Palmschoß 292 – 39042 ブレッサノーネ

https://www.forestis.it/en

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