メルボルン近郊、土地と一体化するレストラン体験

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Brae

メルボルン中心部から車で約1時間半。

都市の輪郭がゆっくりと薄れていき、小さな町Birregurraの外れに差しかかると、緩やかな丘の斜面に、ひとつのファームハウスが現れる。

その先にあるのが、World’s 50 Best Restaurantsにも選出されたことのあるオーストラリアを代表するレストランの一つ「Brae」

Braeとは古いスコットランド語で丘の斜面を意味する。
その名のとおり、レストラン、オーガニックファーム、そしてブティックアコモデーションが一体となった、ひとつの思想が息づく場所だった。

シェフのDan Hunter氏は
この土地の再生から始め、建物を改修し、農地を整え、自分たちの手で食の循環をつくり上げてきた。

お皿の上に届くのは、その朝に摘まれたものだけ。毎朝その日のサービスのために収穫を行い、地域の生産者が丁寧に育てた食材でそれを補う。農薬も合成肥料も使わない再生農業の手法で、土地そのものを守りながら料理をつくっている。

そんな彼は2017年、World’s 50 Best RestaurantsにBraeが選出された時には、
「世界に5000万ものレストランがある中で、50軒のリストに名を連ねることは、純粋な喜びだ。
しかし最も厳しい批評家は、いつも自分自身だ。」
と語っている。

キッチンと畑の距離が近く、
この構造自体が、Braeの料理の本質をそのまま表している。

Braeの料理は、いわゆるファインダイニングにありがちな技巧や華やかさを前面に出すものではなかった。

印象的なのは、一皿ごとの必然性があること。

この土地、この環境、このキッチンだから成立しているという一貫性があり、たとえば野菜ひとつをとっても、収穫のタイミングや状態がそのまま皿の上に現れていた。

コースはりんごとレモンマートルの冷製ブロスから始まった。
澄んだ液体に、柑橘の香りがすっと溶けている。

ポテトジェムには、ロベージュと熟成マウンテン・トムチーズ。

カブとブルホーンペッパー、トマトウォーターとルイボスのフィンガーフード。

アイスプラントと乾燥酒は野菜が持つ塩気と、酒の甘みが静かに重なる。

熟成させた海老は、シトラスとバイオダイナミッククリームとともに。
センスよく花が添えられていた。

Mal’s beansとムール貝、蛤のエキスとイエローワインのスープ。
貝の記憶が底に沈む軽やかな一椀。

海藻で煮込んだかぼちゃのテリーヌ。

そして、
Braeファームの野菜ガーデン、4月12日。
この日に収穫されたものだけが皿になる。
オレンジのナスタチウムが咲き、緑のソースが土台を支える。

カカオとピスタチオを練り込んだ鴨レバー。

イラクサとサマースカッシュのポテト煮込みは、この鮮やかな色のムースで届く。

植物をそのまま掬ったような色と、素朴な甘み。

牛ショートリブは、さつまいもの葉をまとい、かぼちゃクリームと種子とともに。

柔らかく、ありきたりな表現にはなるが口の中で溶ける。

デザートへの橋渡しは、葉に包まれたオレンジのシャーベットとチョコレート。

シャーベットの冷たさがチョコレートのほろ苦さと混ざり合い調和され、絶妙で美味しい。

冷凍ベリークランブルには、プラムとアニシードマートル。
白い球体が赤いパウダーがかわいらしい。

最後に、パースニップ。
10年以上変わらず、コースの締めに在り続ける一皿だ。

サービスもまた、この場所の空気感と調和している。

環境を邪魔しない距離感と、余白のある繊細なホスピタリティが心地よい。

Braeでの体験は、アクセスの不便さから気軽に立ち寄れる立地ではないからこそ、訪れる行為自体が一つの美しい目的になるのだろうと感じた。

メルボルンを訪れる際に、ここはもう一つの時間を体験する軸として訪れる価値のある場所だと思った。

Information

Brae

4285 Cape Otway Road Birregurra, Victoria 3242

https://braerestaurant.com

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